人研ぎ仕上げ

人研ぎ読んで字のごとく、人(左官職人)が研ぎ上げて仕上げる。
セメントに5mmぐらいの大きさの種石(大理石など)と顔料を混ぜて、塗り付ける。固まったところで、グライダーで荒く表面を研ぎます。徐々に目の細かいペーパーでツルツルに磨いていき、最後にワックスで仕上げます。
元々は、大理石の仕上げの代替え仕上げでしたが、大理石などの石仕上げとはちがった雰囲気を醸しだし、独特の味わいがあります。街を歩き注意深く古い建物を見ますと、床の仕上げに使われているのを発見できます。昭和初期の建物でよく使われているような気がします。意外と都内の古い路線の地下鉄の柱の仕上げに使われてたりします。また古い公園の滑り台がそうであることもあります。
工場でブロックにした製品があり、それで仕上げられた床もありますが、この仕上げの特徴を生かすのは、やはり現場で広い面積を一体で仕上げるのが一番だと思います。色や種石を替えた範囲の境目に真鍮の目地棒埋め込み、目地棒ごとフラットに磨き上げた床は、最近はほとんど行われないですが、かなりカッコイイです。
この現場での「人研ぎ仕上げ」は、費用がかかる、手間がかかる、出来る職人さんがあまりいないなどの理由で採用されることがほとんどなくなりました。時間が経つと味わい深くなり、暖かみのある仕上げはやはり捨てがたい存在です。
「農家のはなれ」の外部の水場で採用してみようと思い、地元に「人研ぎ仕上げ」が出来る職人さんもいたことで、実現しました。
あらかたの形を作った型枠に配管と鉄筋をセットしてコンクリートを流し込み、大体の洗い場の形を作ってから、表面や細かい立ち上がりなどを「人研ぎ仕上げ」で仕上げていきます。グライダーも使いますが、仕上げの工程はまさに、職人さんが「手」で磨き上げていきます。
今回実感したのは、手間がかかるのでやりたがらない理由の一つに、グラインダー等で磨き上げていく段階で、セメントの粉末が飛び散り、かなり周りが汚れる。養生や清掃がことのほか大変である。費用の問題よりやる気の問題のような気もしました。
毎回そうですが、現場にいって、黙々と作業している職人さんの背中を見ると、いつも何かジーンとした気分になります。
(タカタ)

《追記》
人研ぎ真鍮目地棒真鍮の目地棒の見切りの例の写真を追加しました。人研ぎ仕上げの色等は変えていませんが、ただ単に人研ぎ仕上げの床仕上げを真鍮の目地棒で分割しています。
@川崎大師薬師殿休憩所の床