菊ハンドル

菊ハンドル一度はどこかでみたことがあるのではないかと思われる、バルブのハンドル。
主に工場などのプラントのバルブに使われているハンドル、小さなサイズのものなら、意外と身近な場所にひっそりと存在してたりします。この製品は世界的に有名なバルブメーカーの株式会社キッツという会社の製品です。
実はこのハンドルのデザインは日本を代表するプロダクトデザイナーの柳宗理によるものです。柳宗理といえば「バタフライ・スツール」が有名ですが、戦後すぐの物資が不足している時代からインダストリアルデザインを始めているので、高度経済成長期に日本に出現する工業製品のデザインを多く手がけられています。レトロなオート三輪も彼のデザインによるものです。
このバルブハンドルのデザインは、メーカーとのやり取りに約1年を費やして完成したデザインだそうです。時間をかけ、無数にスタディー模型を作っては壊し修正してデザインしたのであろう、完成度の高いデザインです。握りやすさを追求したシンプルなデザインですが、よくよく見るとかなり複雑な形状です。
写真の小さいサイズのものは指の引っかかりの丸ポチの突起は6カ所ですが、サイズが大きくなると8か所、10カ所と自然な感じで大きさと形状が変わります。丸ポチをつなぐブリッジも中を抜いて、橋状の形状になっています。
この橋状の形状にしたのは握りやすさや強度を維持したまま材料の減らしたためだと思われます。ひたすら検討に検討を重ねた結果、シンプルで必然的ではあるけど、美しいデザインが生まれたのだと思います。
柳宗理はアノニマスという言葉をキーワードに使い、デザイン活動をおこなってきた。このアノニマスという言葉、「無名の」「デザイナー無しの」という意味を含んでいるが為に、少し誤解を受けやすいかと思います。
作家的な立場を否定する意味合いはあまり持っていないと思います。工業製品ではなく、作家が介在しないアノニマスデザインは長い時間をかけた淘汰と改良の元で残ったデザインで、やはりそこには、人の意思とエモーションが存在します。無名やデザイナー無しとはいっても、、、。
私たちもいろいろな所に出かけ、デザインのインスピレーションをアノニマスなもから得てます。アノニマスデザインで見落としてはいけないのは、結果的に出現したものではなくて、そのデザインが生み出されたプロセスだと思われます。
また当たり前ですが、アノニマスデザインが生まれるのと、作家がデザインするプロセスは異なります。無限のデザインのスタディー時間と有限のスタディー時間が大きな違いかもしれません。
そのアノニマスデザインを指向し続けてきた柳宗理はなんとなく苦行僧に近いのかと思います。いや良いものを生み出すデザイナーは求道者的なのかも知れません。良いとされるアノニマスデザインに到達するプロセスをデザイナーが一手に引き受けるのですから、、、その違いを意識しつつも、、、

さてさて、、この「菊ハンドル」なかなかカワイイのでインテリアデザインに利用してみたいと思っています。浴室のシャワーの水栓でタイルの壁面に付けてみるのもカッコイイのではと、、、、

バン型自動車(富士自動車)オート3輪の他にも、1960年に富士自動車製のバン型小型自動車のデザインを手がけている、なかなかチャーミングなデザインです。
最近、電気自動車の話題が大きく、近い将来自動車も電動が主流になっていくのでしょうか??電気自動車はガソリン車に比べて、部品点数が圧倒的に少ないそうです。なので、自動車産業のメーカー以外から新規参入しやすく、ヨーロッパでは、さまざまな小さい会社が立ち上がりつつあるそうです。
私たちミーナクシ―デザインも電気自動車のデザインを手がけたいなと、ぼんやりと考えています。(ちょっと話が脱線しました)

この富士自動車はあのスバルとは違うメーカーだそうです。
フジキャビンはかなりアバンギャルドなデザイン。

(赤い菊ハンドルの写真は、公園で遊具として再利用されている消防車についていたものを撮影)

菊ハンドル」への2件のフィードバック

  1. ヒロ

    良いデザインに出合うと嬉しくなりますね。
    というかデザインされていないものが多すぎてため息が出ることが多いです、、、

    最近の自動車は特に酷い。
    フィアット500、New Mini、New Beetle、、、
    あ゛〜 がっかりです。
    むしろ新しくデザインした方が良かったのではとすら思います。
    そのうちなじんでしまうのだろうか。

    某高級外車もエンブレムを見ないと分からなくなってきているような気がします。
    パット見た目が同じで平均化されたつまらないものになったなぁ〜ブツブツ、、、

    一目惚れ出来ないんです。(悲)

  2. masaya takata

    >ヒロさま
    そうそう、自動車のデザインは、出尽くした感があるのではないかと最近感じています。
    なので、電気自動車の出現は、今までの自動車のデザインの流れをリセットするタイミングになっているのではないかと感じています。

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