メカモ

mekamo1前回の投稿でフジキャビンについて少しふれました。このフジキャビンをデザイン、設計したのが、戦後日本の自動車産業初期のインダストリアルデザインの鬼才富谷龍一です。アバンギャルドな造形曲線のボディーはFRPの一体成形だそうです。
この車は1955年から1956年のわずか2年の間しか生産されなかった。当時のFRPの成形技術が未熟で生産性が低く、生産性やクラックが入るなどトラブルが多かったのが理由だそうです。
ちょっと先を行き過ぎてたようですね。
さてさて、タイトルの本題の『メカモ』。1972年から1980代の終わりまで学研から学習教材として発売されていました。数年前に『大人の科学』のシリーズとして復刻しました。
このメカモの原型となったものは、富谷龍一が車のサスペンションの研究の浮かんだアイデアをもとに、ロボット工学の森正弘教授と共に2人で制作したものが原型だそうです。おもちゃメーカーからの製品化の話があったのですが、2人はおもちゃとして製品化するのは嫌で、学研からリンク機構の学習教材として製品化する方向を選んだそうです。
子供の頃、街の模型屋さんにディスプレーされていたのを眺めていた記憶がありました。何となくハードルが高いなと子供心に感じていて、購入しませんでした。そして21世紀なって10年も経つ夏に、ふと復刻版をamazon.comで購入して息子と組み立ててみるかと思い立ちました。おもちゃとしてではなく、教材として、しかも子供のためではなくて、、mekamo2
目で見て実態としてわかる機構ですが、単純なモーターの回転運動が、複雑な運動に変換する仕組みを理解するのは、大人になっても難しい。やたらと丁寧な組み立て説明書を見ながらではあるが、組み立て自体も決して子供向けで簡単なものでなかったです。まさに「大人の科学」、、、(何回か部品の向きを間違えて手戻りしました。)
「ハードルが高そうだな〜」と子供心に感じた直感は、大人になって組み立ててみて「やっぱハードル高かったな」という実感と大差はないなと感じた。(成長してないのかよとツッコミたくなります)
最近の工業製品や技術は、身体的実感とは隔離した部分が多く、いろいろ物事の成り立ちがみえにくいです。デザインもより記号的な側面が多くなり、物の実体とは離れた側面のデザインの重要性が大きくなっています。デザインしていく切り口が多くなって、おもしろい時代かもしれませんが、、、。
私たちは『機械の時代のデザイン』に対して懐古趣味的気持ちはそんなに持ち合わせていませんが、実際の仕事上はまだまだ多くの実態のある物のデザインに関わっているので、あえて『メカモ』を組み立てるということは、「学習教材」的にはアリかも知れませんね。

(タカタ)