カタチをみつける

funikura_model
去年の11月にバルセロナのサグラダファミリアを訪れました。教会の地下は、サグラダファミリアの設計や工事に関するものが、展示されているスペースになっています。 その展示の中で、特に目を引くものの一つに、『フニクラ・モデル』があります。この模型は、ガウディーが、構造的に安定した形を探すために考案した、縮小模型です。紐に複数の錘りを規則正しくぶら下げると、重みで紐がたわんで、ある曲線が現れます。紐にはカーブの方向に重力によって引っ張られる力しかはたらいていません。それを逆さまにすると、逆にカーブの方向には、重力に対抗する力しかかかっていないことになります。このカーブは重力に対して理想的なカーブのアーチになっています。
デザイナーや建築家がカタチを”創造”するのではというイメージを持っている方々が多いと思いますが、実はカタチを”探り出す”という感覚の方が近いのではないかと思います。特にガウディーが、紙と鉛筆でのスケッチだけでなく、このような装置を自ら考案してカタチを決めていったのは、先進的だったのではないでしょうか。
私たちも、日々、カタチをみつける作業をしています。ガウディーが没してから90年以上たった今では、創作環境の様相は劇的に変わっています。ノートパソコンも一昔前のスーパーコンピューター並の性能があったりします。なので、今はコンピューターの中にモデルを組み立てて、シミュレーションしてカタチを決めていくのが可能になっています。デスクトップシミュレーションという感じでしょうか、、、、、
そこで、試しにこのガウディーが考案した『フニクラ・モデル』の手法を使って、カタチを作ってみました。

simulation_model
ここでは、線でメッシュを作って、メッシュの交点に力を働かせます。メッシュの四隅の点は固定しておきます。ガウディーのモデルとは違って、最初から逆さまにしておけるので、上向きに重力を与えます。曲線が生まれるように、メッシュの線はゴム紐の様に弾性を持たせます。この画像はまだシミュレーション前のカタチです。次にムービーをクリックして見てください。途中、弾性の値を動かしてみているので、上下に弾んでいます。今回、不定形な多角形のメッシュで試みているので、曲面や曲線を生成してません。もっとメッシュを細かくすると、曲面や曲線に近くなっていきます。
パラメーターの値でカタチは不定ですが、どこかでパラメーターを固定して、カタチを決めます。今回は、そのカタチを紙で作れるようにプリンターから型紙を出力して、切り出して組み立ててみました。

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ガウディーが何年もかかって検討していたことが、今は瞬間に、しかも無数のバリエーションで検討できるようになりました。コンピューターのシミュレーションでカタチを見つけるのは、有効な手段ではありますが、一番大切なのは、ガウディーが『フニクラ・モデル』を考案したように、カタチを決める”手続き”そのものを考案しようとする姿勢だと思います。